Vol. 03
基本を大切にしながらも、新たなパンの可能性を求めてチャレンジし続けているパン屋・PAINDUCE(パンデュース)。新鮮で安心できる素材に徹底してこだわる姿勢や、パンづくりへの想い、さらにスマイLINKオリジナルメニューの「パンとスープのセット」について、トップシェフの米山さんにお話をうかがいました。
PAINDUCEシェフ米山 雅彦(よねやま・まさひこ)
1971年兵庫生まれ。大学卒業後「カスカード」に入社、パンの世界に入る。
2001年より「コム・シノワ」のスーシェフ。
さらにパンの見聞を広めるため、ヨーロッパ各国で修業したのち、2004年、日常の食卓を支えるパンをつくっていきたいという想いから、「PAINDUCE」のシェフに就任。
PAINDUCE
店名はフランス語の「le pain」(パン)と英語の「produce」(生産)をあわせた造語。7軒の実店舗とオンラインショップを運営。特に素材へのこだわりが強く、使用する小麦粉・全粒粉・ライ麦粉はすべて国産品を使用している。
こだわっているというか、日本には国産のおいしい小麦がありますから、それを使う、それを食べるというのがやはり自然ではないでしょうか。「日本の素材で、日本人に合うパンをつくる」ということに、私は大きな意味を感じていますし、そのために当たり前のことをしているだけという感覚です。それに小麦は栽培の仕方や挽き方によっても味や食感、風味が変わりますから、誰がどうやってつくったのかまで含めて、素材の素性を知っておくことがとても大事だと思います。そこまで知って初めて、どの小麦をチョイスするか、どんなブレンドをするかが決まり、本当につくりたいパンに仕上げることができるんです。
今でこそ「ファームtoテーブル」という考え方が珍しくなくなりましたが、私たちの仕事は農場と食卓を結ぶ橋渡しのような役割だと思っています。ですから、農場にも足を運びますし、農家の方ともじかに顔を合わせてお付き合いしています。例えば、そのなかには、小麦をオーガニック栽培するだけでなく、挽いて粉にするところまで自分たちでされているところもあります。そこまでされる農家は日本に数軒しかないんですが、お付き合いするなかで知ることができたそういう農家の方のこだわりや想いまでお客さまにお伝えしたいんです。
セットにつけるパンは、北海道十勝産の石臼挽き小麦粉「スムレラ」を使ったブール、胚芽のグランデ、クルミのリュスティックなど、先ほどお話しした国産小麦の持つ風味をしっかり味わっていただけるハード系のパンを中心にセレクトしています。ハード系というのは、本当にパンを好きな人が好んで食べるというイメージを私は持っています。名前の印象から「かたいのかな?」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、そうではありません。パンデュースでつくっているハード系のパンは、むしろ柔らかくモチモチした食感が特徴。日本人の食の好みに合わせた仕上がりになっています。
農家の方とつながりがあるおかげで、パンデュースには本当においしい野菜が届きます。契約している小麦農家の方がつくったものも届きますし、知り合いの農家を紹介いただき、とてもおいしい希少品種を特別に分けていただくこともあります。いずれも、丁寧に育てられた野菜ばかり。そこで、セットで提供するスープは、そのおいしさを存分に味わっていただけるよう、何も加えず、野菜から出る水分でじっくり煮詰めました。野菜の旨味が濃厚な、それでいて口あたりの優しいスープですね。毎月、旬のおいしさを楽しんでいただけるよう、3種類のスープをセレクトしてお届けする予定です。
使う素材も、つくり方もまったく変えていません。なぜつくり方を変えずにネット販売ができるかというと、素材が劣化しない冷凍機と出合ったからですね。例えば、普通の冷凍庫で肉や魚を凍らせると、ドリップといって、解凍するときに素材が本来持っている水分や旨味まで溶け出してしまうんです。同じようなことがパンでも起こるのですが、この冷凍機を使ったプロトン凍結という方法(下図参照)だと、解凍後もつくりたてと同じような状態をキープできるんです。フードロスのことなども考えて、ネット販売についてずっと考えてはいましたが、この冷凍機との出合いがなければ今も実現できていなかったでしょうね。
おすすめは、ちょっと水を吹きかけてからガスグリルを使って温めること。「高温で短時間」というのがパンをおいしく温めるコツで、強火で庫内を高温にできるガスグリルはパンの温め直しに向いているんです。個人的な好みでいうと、強火で1分弱くらいが一番おいしいと感じます。ちなみに、スマイLINKで買えるパンクレエという商品は、そもそも「ガスグリルで焼ける、自分だけのオリジナルパンをつくろう」という大阪ガスさんとのコラボから生まれたもの。好きな素材をのせて、付属のトマトソースをかけてピザ感覚で食べていただけるパンです。野菜をのせてもいいですし、オイルサーディンなど塩味の強いものをのせるとおつまみにもなります。機会があれば、ぜひパンクレエも食べていただきたいですね。
パンデュースがネット販売を開始したのは本当に最近のことなんです。ですから、「どんな方が、どんな風に食べるんだろう?」と、買っていただくお客さまのことを想像しながら、幅広い層に楽しんでいただけるようなメニューを用意しています。「パンとスープのセット」は、朝食用としてはもちろん、私はさまざまなおかずと並べてディナーで食べるのもいいんじゃないかと思っています。家族そろって、あるいはホームパーティーでと、いろいろなシチュエーションで、みんなで楽しく、おいしく召し上がっていただければ嬉しいですね。