エジプト
vol.45
夜間の安全な交通のために欠かせない街灯。街灯の節電を進めるには、どうすればいいだろうか。
人通りがないときに少し暗く点灯する調光機能つきの街灯や、太陽エネルギーを電気に変換する街灯は、すでにある。では、街灯を、自ら発光する別のものに置き換えるアイデアはどうだろうか。
エジプトのカイロ・アメリカン大学は2022年6月、建設工学を学ぶ4人の学部生が、自ら発光するコンクリートを開発したと発表した。日中に太陽光を吸収し、夜になると発光する仕組みだ。
学生らによると、発光するコンクリートは通常のコンクリートと大きく違わないが、発光するための“何か”を加えている点がポイントだという。
現地で調達できる材料を使うことにこだわり、候補にあがった複数の材料がどの程度発光するかや、通常のコンクリートの性質にどのような影響を及ぼすかを調べたそうだ。
発光するコンクリートは歩道や自動車道など、あらゆる種類の道路で使える可能性がある。4人の卒業論文を指導したモハンマド・ナギブ・アブゼイド教授は、プレスリリースで、「このプロジェクトの主要なテーマはサステナビリティだ。新しいコンクリートは、道路の照明や道路標識で使われるエネルギー量を大きく削減する助けになるだろう」と語っている。
学生の一人であるザイナブ・マフムード氏によると、研究をはじめたきっかけは、「コンクリートが環境に悪影響を与えている」という批判があることを知り、「重要な建設材料であるコンクリートを、より環境に優しいものにしたい」と思ったことだったという。
コンクリートは、製造時のCO2排出量が多いといった課題が指摘されているが、一側面から見れば環境負荷が大きくても、別の側面から見れば環境問題の解決に貢献することがあるのではないだろうか。マフムード氏らの、柔軟な発想を見習いたい。
実は、2022年のCOP27(国連気候変動枠組条約第27回締約国会議)は、11月にエジプトで開催される。そんな同国の学生の間で、サステナビリティの考え方が浸透していることが喜ばしい。
Text by 木村つぐみ
参照元: AUC Construction Engineering Team Develops Glow-in-the-Dark Concrete | The American University in Cairo
この記事は、2022年7月12日に書かれたものです。