暮らしのデジタルプラットフォーム「スマイLINK」からこだわりの商品をご紹介
Vol. 06
兵庫県・たつの市で地元の人に愛されている精肉店『肉の山喜』。この店の看板商品が、「手造り秘伝のタレ焼き豚」です。うすくち醤油発祥の地・龍野の醤油を使い、昭和30年の創業以来変わらないオリジナルレシピで丁寧につくられた焼き豚は、誰もが親しみやすい甘口の味わい。全国にファンを持つ、この逸品について、製造工程のこだわりからおいしい食べ方まで、代表取締役社長の前田大詞さんにお聞きしました。
代表取締役社長前田 大詞(まえだ・だいし)
1975年兵庫生まれ。
肉の山喜・三代目代表取締役社長。より多くの人に「肉の山喜ならではのおいしさ」をお届けするべく、焼き豚のネット販売をスタートさせるなど、新しいことに挑戦し続けている。
肉の山喜(やまき)
昭和30年の創業以来、地元のお肉屋さんとして愛される人気店。繁盛期には1日500本を売り上げる看板商品「手造り秘伝のタレ焼き豚」をはじめ、「絶品焼牛」、「牛すじコロッケ」など、数々の人気商品をネット販売している。
肉の山喜は、昭和30年に祖父が創業した精肉店。本当にどこにでもあるような地元のお肉屋さんでした。焼き豚はもともと祖母が手づくりしたものを週に何度かお店に出す程度。定番商品ではなく、知る人ぞ知る商品だったんです。その焼き豚を「商品化して広めていこう!」と決めたのは、競合となるスーパーマーケットが増えてきて、「小さな精肉店が生き残っていくためには、“うちでしか買えないもの”が必要だ」と感じたことが理由です。地元には焼き豚のリピーターのお客さまも多かったですし、私自身もめちゃくちゃおいしいと思っていたので、「食べていただければ絶対売れる」という自信はありました(笑)。
はじめてメディアに取り上げていただいたのは、商品化を決めてから3年くらい経ったころでした。お客さまが推薦してくれて、ある雑誌のお取り寄せ特集にうちの焼き豚が掲載されたんです。年末特大号だったんですけど、掲載された途端にすごい数の注文が入りました。当時、焼く作業は私ひとりでやっていたので、「どれだけ焼いたらええねん……!?」って思いながら、朝から晩までずっと焼き豚を焼いていましたね(笑)。おかげさまで評判もよく、それ以降も、テレビ、ラジオ、新聞と、いろいろなメディアに「これはおいしい」と取り上げていただいて、全国から毎日注文をいただくようになりました。ただ、これ以上注文が増えると、対応しきれずお客さまに迷惑がかかるかもしれないと、今は少し取材をセーブさせていただいています。
祖母のレシピ通りに、生の豚肉を秘伝のタレにつけ込んで、しっかり下味をつけてから、すべて手づくりで焼き上げています。ひとくちに豚肉といっても個体差がありますし、その日の気温なども影響するので、火加減は毎日微妙に調節する必要があるんです。そのために、ドラム缶を改造した専用釜を使って、焼け具合を目でチェックしながら直火で焼いています。試しに業務用のスチームコンベクションオーブン※で焼いてみたことがあるんですけど、どうしても同じ仕上りにはなりませんでした。お客さまに提供する商品である以上、常に同じ品質を再現しないといけませんし、そのためには手づくりじゃないとダメなんですよね。
※オーブンに蒸気発生装置を取りつけて、熱と蒸気を自由にコントロールできる多機能の加熱調理機器。
とにかく祖母秘伝のタレに最も合う豚肉を1年かけて探しました。各地からおいしいと評判の豚肉を取り寄せて試食を繰り返した結果、「これだ!」とたどりついたのが今使っている宮崎県の霧島山麓ポークです。さらに、焼き豚に使う部位といえば、ロース・バラが主流なんですけど、これもレシピ通りにモモ肉を使用しています。脂身が多いロースやバラは、多少火加減を失敗しても固くならず、やわらかく仕上がるんです。でも、脂身が多いお肉って最初はおいしくても、食べ続けると重たく感じる場合もありますよね。その点、うちの焼き豚は火加減調節の手間を惜しまず、赤身が多いモモ肉でつくっているので、ずっとおいしく食べられます。はじめてうちの焼き豚を食べたお客さまからは、「今まで食べていた焼き豚と全然違う!」「感動した!」という感想をいただいています。
真空パックにして、冷蔵で届けています。お客さまからいただくご意見で冷凍を望まれる声も多いですし、いろいろ試行錯誤しながら、商品開発は行っているのですが……。でも、私が一番おいしいと感じるのは絶対焼き立てですし、お客さまにもできるだけ焼き立てに近い状態で食べていただきたいので、つくり置きはしたくないんです。常時50~100本の注文があるんですけど、おいしく食べていただけるように、注文いただいた日に焼いて、当日から翌日の間に発送しています。届いた焼き豚をパックのまま10分ほど湯煎していただくと、本当に焼き立てと同じような状態で食べていただけます。
おかずの一品として、そのまま食べていただくのが一番のおすすめです。ただ、うちの焼き豚は甘口に仕上げているので、ごはんには合うんですけど、お酒のつまみとしては少し甘いと感じる方もおられます。そこでお客さまから教えてもらったのが、柚子胡椒をつける食べ方。「柚子胡椒をつけて食べるとおつまみにぴったりなんです」と言われて実際に食べてみたら、本当においしかったですね。あと、残った焼き豚でつくるチャーハン。焼き豚自体に味がついているので、焼き豚・卵・ごはんを炒めるだけで、もうめちゃくちゃおいしくなるんですよ。ポイントは「野菜を入れずに焼き豚と卵だけでつくること」。実は、このつくり方もお客さまから教わったんです(笑)。
この「手造り秘伝のタレ焼き豚」は、食べると誰かにすすめたくなるみたいで、多くのお客さまに愛されるようになったのは、クチコミの力がとても大きかったんです。大阪ガスのサイトで販売してもらえることになったのも、姫路城で行われていたイベントで、たまたま『あまから手帖』に携わる編集の方と知り合い、うちの焼き豚を食べてもらったことがきっかけでした。その方のクチコミで「あまからセレクション」に選んでいただけたんだと思っています。ですから、ここで私がいくらおいしさを語るよりも、実際に食べていただいたほうが早いんですよね(笑)。とにかく一度食べてみてください。それだけです。