雨の日だって再エネは作れる。中国で進む「雨粒発電」
晴れの日、太陽光パネル設備は太陽から降り注ぐ光をエネルギーに変えることができる。しかし、天気の悪い日に発電することはできない。しかし、もし雨の日でも発電ができるようになったら、画期的ではないだろうか?
そんな期待が持てそうな研究が、中国の清華大学の研究者たちから発表された。雨粒から発電する新技術だ。雨粒は空から降ってくるときに少量のエネルギーを発生させる。今回ご紹介するのは、この運動エネルギーを電気に変換する「摩擦電気ナノ発電機(TENG:Triboelectric nanogenerator)」だ。
TENGは、液体と固体の接触帯電を利用して、波動や他の形態の液体と固体の摩擦帯電力(靴をカーペットの上で擦るときのように、物体が互いに接触したり滑ったりするときに発生する電荷)からエネルギーを得る。これまで、液滴ベースのTENGパネルでは得られる電気量に限界があることが大きな課題であった。
清華大学の研究者らは、ソーラーアレイ(複数のソーラーパネルを組み合わせたもの)と同様の方法でTENGパネルを連結し、予期しない電力の損失を抑える方法を探求している。これにより、液滴ベースのTENGパネルで得られる電気量の課題を克服できる見通しだ。
液滴ベースのTENGパネルアレイの最大出力は、1平方メートルあたり約200ワットである。スマホの充電は可能であり(一般的なスマホ充電器は約20~30ワット)、1畳ほどのホットカーペット(約200ワット)も使うことができる電力だ。
清華大学深圳国際大学院のZong Li教授は、Interesting Engineeringのインタビューで「液滴ベースのTENGパネルは瞬時出力が非常に高いが、メガワット級の電気機器に継続的に電力を供給するのはまだ難しい。そのため、複数の液滴ベースTENGパネルを同時に利用できるようにすることが非常に重要」と語っている。
雨粒から集めたエネルギーは、クリーンで再生可能な電力源になる可能性があるが、これまでこの技術を大規模に開発することは困難だった。今回の研究は、この状況を変える第一歩となるかもしれない。まだ初期段階ではあるが、雨の多い場所や、従来の水力発電のための川やダムなどから遠い場所で特に活躍しそうだ。最終的には、日本ではおなじみの台風や暴風雨でさえも電力源に変える可能性を秘めている。
いつの日か、雨粒パネルがソーラーパネルと並んで建物の屋根に設置され、晴れの日も雨の日もクリーンな電力が得られるような将来がくるかもしれない。
Text by Manami
この記事は、2023年9月19日に書かれたものです。