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建設業界が多くのCO2を排出していることをご存じだろうか。国際環境機関によると、世界のエネルギー消費のうち、36%を建設業界が占めているという。そのうち11%が、鉄やセメントなどの製造に由来するものだ。

この問題に対して解決方法を提示するのが、デンマークのボーンホルム島に2021年夏に誕生予定の、同国初のカーボンポジティブなホテル「Hotel GSH」だ。

ホテルの特徴は、建物の大部分が木造であること。鉄やセメントを使用した場合と比べてCO2の排出を削減することができる。また、木材がCO2を大気中から吸収するため、カーボンポジティブになるという仕組みである。さらに、使用される材料は、将来的に再利用できるようデザインされているため、取り壊しによる廃棄物も出ないサーキュラーデザインになっている。

そのほかにも、家具などを製造する際に余った木材や、地元企業から集めた、花崗岩(かこうがん)の採掘をするときに出るがれきなどの廃棄物をアップサイクルして利用する。花崗岩は熱を吸収・放出するため、室内の温度管理に最適であるという。さらに、天窓から日光を取り入れたり、オープンな空間で風通しを良くしたりすることで、自然の力を取り入れて電力の使用量も減らす。24室の部屋や会議室、屋上スパを備えた施設になる予定だ。

Hotel GSHをデザインしたのは、デンマークの建築設計事務所「3XN」と、サーキュラーデザインやデジタルデザインを専門としたシンクタンクである「GXN」だ。これまでにも、コペンハーゲン最大の病院建築で、患者の居心地の良さやスタッフの働きやすさを追求したデザインなどを手掛けている。

“アイデアは簡単です──私たちは、カーボンポジティブな建築が良いデザインとビジネスをつなぐと信じています。このホテルは、カーボンポジティブな未来を描くとともに、旅の目的地としても魅力的な体験を提供します。これがお客さまのニーズとなり、良いビジネスとなるのです。”

―Kasper Guldager Jensen 3XN建築家兼パートナー、GXN創業者(プレスリリースより引用)

「Hotel GSH」が、これからの建設業界に新たなデザインの道筋を示すものになるに違いない。

Text by 佐々木あみ