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ペットボトルやビニール袋など、私たちの身の回りには多くのプラスチック製品が存在している。これらのプラスチックが海洋に流れ出ることや、環境中に残ったマイクロプラスチックによる自然や人体への影響が懸念され、現在プラスチック削減やリサイクルの取り組みがさかんに行われている。

プラスチックから多種多様なモノが作られるようになった中、今回米カリフォルニア大学リバーサイド校が発表したのが、ペットボトルなどのプラスチックごみをアップサイクルして電気を貯める方法だ。

長年、ガラス瓶や砂、スライムのような玩具であるシリーパティーやキノコなどを使って、エネルギー貯蔵材料の開発を行ってきた研究チームは、今回プラスチックボトルによく使われるPET(ポリエチレンテレフタレート)ごみからスーパー・キャパシタと呼ばれる電気二重層コンデンサを製造した。スーパー・キャパシタとは、固体と液体が接する面に正と負の電荷が吸着する現象を利用した、優れた性能を持つコンデンサ(※)のこと。リチウムイオン電池に比べるとそれほど多くエネルギーを貯蔵できないが、速く充電できるという特性があり、自動車をはじめとするさまざまな用途での利用が期待されている。

製造プロセスは、以下のとおりだ。まず最初にPETプラスチックボトルの破片を溶剤に溶かし、エレクトロスピニングと呼ばれるプロセスを使用して、ポリマー(2分子以上が結合した化合物)から細かな繊維を作り、炉の中でプラスチック糸を炭化させる。その後、この材料を接合剤と導電剤と混ぜて乾燥させることで、スーパー・キャパシタが作られる。

米カリフォルニア大学リバーサイド校のミフリ・オズカン教授はUC RIVERSIDE Newsの取材に対して、下記のように述べている。

「2040年までに世界の電気自動車の割合が30%になることが予想されているが、バッテリーの原材料が高価格であるという問題がある。ペットボトルごみをアップサイクルして作るスーパー・キャパシタは安価に生産でき、プラスチック汚染問題の解決にも貢献する」。

経済産業省の発表によると、現在は電気自動車の価格の3分の1をバッテリーが占めている。バッテリーの原材料である高価なリチウムやコバルトなどの価格が車体価格に影響するためだ。

研究チームは、このスーパー・キャパシタの製造プロセスは産業規模に拡大でき、市場性があるとみている。また、今後プラスチック糸を炭化する前に、エレクトロスピニングした繊維にホウ素や窒素やリンなどの化学物質やミネラルを加えて電気的特性を向上させ、材料の調整を計画している。

プラスチックごみを減らしつつエネルギーも貯蔵できる、米カリフォルニア大学リバーサイド校が開発したスーパー・キャパシタ。性能やさまざまなデバイスへの適合性などが改良されて、リチウムイオン電池の代用、もしくはリチウムイオン電池との併用が可能になることを期待したい。電気自動車が手ごろな価格で手に入る日は近いかもしれない。

※電池は電気を作って貯蔵・放電するが、コンデンサは他の電子部品から与えられた電気を貯蔵・放電するという違いがある。

Text by クリューガー量子